新川工房紹介

                  

 青亀堂では新川工房と共同で風土に根ざしたオリジナル製品を開発していますので、新川工房について少々解説しておきたいと思います。

 新川工房は、奥羽山脈に発する広瀬川の源流の1つである新川のほとりにあります。
縄文の昔から連綿と続く原生林を背後に控えながら、百万都市杜ノ都仙台をのぞむこの場所は豊かな自然と洗練された都市生活が出会うところでもあります。
太古からの奥深い風土にうらずけられたエッセンスを掘りさげ、うけつぎながら、今日の衰退しきった
日本の「ものづくり」、および均質化した暮らしに新たな息吹を注ぎ込むことを目的としています。

 東日本の落葉広葉樹林地域はかつて縄文文化の華をさかせました。しかしその後は中央政権の侵略、編入の中でつねに「後発地域」として多くの収奪をうけ続けても来ました。中央から「エミシ」と呼ばれた縄文の末裔達の文化−言葉、信仰、造形のほとんどは破壊され、失われ、忘れ去られてしまいました。しかしそのエッセンスの幾割かは、のちのち底流となって様々な次元(アイヌ文化、東北の仏教文化、修験道、近現代美術など)に顔をだし、独特の異彩を放ってきました。

 新川工房ではそれら垣間見える縄文、エミシの気配を一つ一つ拾い集め、今なお広がる豊かな自然を背景に、忘れられてしまった東日本の本当の文化、かたちを今日目に見えるようにしていくことを最大のテーマとしています。それゆえ新川工房の製品の多くは見本のない新たな創造−オリジナル品でありながら、深く伝統につながろうとするものです。

 そのような姿勢はパッケ−ジ化された伝統を模倣することでなんとか命脈をたもとうとする今日の我が国の伝統的手仕事、いわゆる伝統工芸と一線を画するものであります。さらにいえば、われわれのやろうとしていることは、ヨーロッパやアメリカ風の模倣でもなく、量産の効率と結びついたモダンでもなく、欧米風のナチュラリスト風を装おうカントリー調でもないということはいうまでもありません。

 われわれのものづくりは正真正銘の現実的でオリジナルな1つの風土から産み出される、独自のイマジネーションであり一つの固有な形であることを願っています。
 それははるか昔に忘れられ途絶えてしまった、みちのくの風土とそこに生きる人間の絆が産み出す、1つの「結晶」であり「センス」であり「様式」と呼べるものだと思います。この失われたかけがえのないエッセンス(それはいってみれば、縄文であり、アイヌであり、エミシであるところの)を受け継ぎ再生させ人類と現代という時代に対して新たな提案ができないかと新川工房は考えています。