仙台のギャラリーターンアラウンドの青野文昭展は、壊れ、廃棄されたモノたちを「修復」しつつ、船と机など、異なるモノと融合させてしまう作品が並ぶ。それもゴミを分別して再利用するリサイクルではなく、まったく役立たないものに「修復」するのだ。作家は震災前から海辺を歩き、これをやっていたし、被災した3.11後も瓦礫からモノを拾い上げ、同じ方法で作品を制作している。おそらく変わったのは彼をとりまく文脈だ。

artscapeレビュー 2012/07/17 五十嵐太郎(建築評論家、あいちトリエンナーレ2013芸術監督)


 リアス・アーク美術館や宮城県美術館などで作品を発表してきた。1990年代から海岸の漂流物など、さまざまな場所で壊れたモノの欠片を拾い、「なおす」と称し、それを補完する制作手法を継続している。だが、青野は再び使えるモノとして正確に復元するわけではなく、「修復」を通じてむしろ使えない異物に変容させてしまう。近年は異種混成的な補完も展開している。自身も少なからず被害を受けた東日本大震災の後は、自宅近辺や親戚宅、馴染みの場所をはじめとする被災物件からでた瓦礫を用い、様々なアプローチでその「補完」を試みることにより、あるべき再生の姿を探索している。しかし、別の用途に役立つリサイクルでもなく、機能しない何かを「創造」する姿勢は変わらない。震災という歴史的な事象は彼の作品の意味を変えた。震災前から震災後的な制作を変わらず行っていることも特筆すべきである。

 「あいちトリエンナーレ2013」オフィシャルサイトより