<「なおす」/「合体」>

 タイトル上「合体」と呼ばれるものに2種類ある。大文字の「合体」と小文字の「合体」である。  小文字の「合体」は、あくまでも「なおす」いとなみのプロセスに附随している。通常の「なおす」は単一の断片。「なおす・合体」では主に二つの断片(「なおす・集積」では二つ以上の断片となっている)。「なおす・合体」では、この二つの断片の勢力が拮抗していて、相互の「基底面」による、戦い、協調、融合などから、全体としての「基底面」が湧出していくことになる。ただしあくまで「なおす」という営みを基盤とするものなので、二つの断片はある共通性を持つ。そして二つが選ばれ、結ばれるための必然性をも合わせ持たなければならない。言葉を代えれば、各々の断片の物理的特徴(形態、色彩、材質など)か、各々に付着する「完全像」に、共通性がなければならないということになる。
 大文字の「合体」は「なおす」いとなみと無関係に、自立した概念として想定される。「なおす」ことに依拠しないので、選ばれる二つの事物は「欠落」した断片である必要は無く、特に必然性で結ばれる必要は無い。完全に異なる二つの事物の固有性、基底面が衝突し、合体し、別な何かになる。 「つくる」、「なおす」という営み各々に拮抗する独自な創造原理となりうる。

 <合体>

 「なおす・合体」とタイトルされる作品は、最初のきっかけとしての断片が、一つではなく、複数の、それも特に二つのみ選ばれて用いられることから、「合体」と設定してある。
 二つの欠損部分の結合と+α(新規修復部分)によって全体像が形づくられて行く。ただしあくまで「なおす」という営みを基盤とするものなので、各々の断片が厳密に同じものの部分である必要は無いが、ある共通性を内在させている必要がある。それらが選ばれ、結ばれるためのある種の必然性を持っていなければならない。言葉を代えれば、各々の断片の物理的特徴(形態、色彩、材質など)か、各々に付着する「完全像」に、共通性がなければならないということである。
 そうでありながらも、各々二つの断片には、各々の固有性があり、形状、色調、文脈、時間、、などの差異がある。二つの断片を結び付けるということは、それらの両者の固有性を持ち込み、二つの違った「基底面」を同時に並べることを意味する。
 そして各々の「基底面」による、戦い、協調、融合などから、全体としての「基底面」を湧出していくことになる。断片各個の固有性は、常に全体としての「基底面」と、きわどくせめぎあい続ける二重の存在となる。部分はあくまでも一個の固有な存在であると同時に、全体に寄与し構成する一要素とならなければならない。
 一つの断片のみで行われる「延長」、「復元」にくらべると、この「合体」は、「集積」と同様、驚くほど複雑な様相を示して行かざるを得ない。
 特に「合体」では「集積」の様に複数ではなく、二つの断片の間に限定されることから、「集積」とはまた異なる意味合いが浮上してくることになる。
 二つの断片・異質なもの同士の影響関係は、よりはっきりと、明解に、展開し、常に双方の競合関係がクローズアップされる。「集積」が時として「多数の断片」と「新規修復部」の二項対比に集約されてしまうことが多いのに比べ、「合体」ではつねに「断片1」と「断片2」の「事物」同士の対比が表出してこざるをえない。そしてそれは「新規修復部」との三項対立、三位一体というダイナミックな関係に繋がって行くことも稀ではない。 「合体」の「基底面」は、複数間の交わりとしてよりも、両者間の肉迫した鋭い競合の中で生成して行く。「基底面生成」の差異は、以下(融合、吸収、侵入、乗っ取り、共存、分裂、犠牲、囲い込み、水増し、移植、培養)と分類し各個に掘り下げて行くこととする。それは本質的に、各々が自立して異なる創造原理を有していると観るからである。  「合体」的生成のメカニズムを現象世界に置いて考えてみれば、異質なもの同士のコミニュケーション(戦い、支配、断絶も含めて)の構造につながっている。「創造」とは作り手が材料を一方的に加工して生まれるものだけではない。実際世界での物事の多くは、作り手と材料がアプリオリに別れているわけではない。作り手がある局面で材料とされ、材料が作り手になる。作り手同士がともに材料ともなりうる。それは本来、「材料」や「作り手」という名で、呼ぶべきではないことを如実に示してくれる。


*「代用」について  

 「合体」する一方が、最初からもう一方の材料となるべく合わせられる場合がある。この場合、材料として代用される一方は欠損のある「断片」である必要はない。さらに両者はそれほど共通性、必然性が無くてもよい。あくまでも「なおす」作業のための材料の「代用」であるので、偶然選ばれたというニュアンスがある。
 これは例えば「なおす・合体・侵入、のっとり」などの作品に近似するかも知れない。しかしあくまでも「、、、侵入、のっとり」の構成物がどちらも欠損する断片であり、ある必然性で結びついている点で異なる。タイトルとしては「なおす・合体・代用」と付けられる。