伊勢神宮  2001年

 

 鳥居、社についてふれたので、伊勢神宮の在り方にも少しふれておきたい。
 伊勢神宮も周囲の自然環境と一体になった一つの表現と見るべきであるが、最も特徴的なのは、20年ごとに破壊し建て替えるそのシステムを、永久にくり返しているところである。まさに先にふれた「循環のシステム」そのものの具現化といえる。媒体としての造形物は一回性であるが、その交流のシステムは永遠に続くものである。神殿は神と共にこの世にあらわれ、神と共にかえっていく。神の現出と帰還を神殿の破壊と再生によって表現している。見えない領域「外部」と見える領域「内部」を同時にきわだたせながら感じさせてくれる。建築物自身を超越した領域を、建築自身の本性において(建築する/こわす)表出する。切り出されたばかりの木材の生き生きとした香りは、森や山の生命力そのもので、神が宿る「いま、ここ」を強調しているようにも思える。この究極の建築システムは、いわゆる一般的な神社建築とまた違う意味において、西洋流の造形観とどこまでも対立するものである。