<隔離・二重構造>

 

始原的分節のもと「境界」を確定し、「境界」を通じて外側の畏怖すべき領域と関係してきた人類。その「境界」を通じたコントロールの技術−「コンタクト回路」こそ、文化発生の根源である。

 常時ごちゃ混ぜでも不可能、永久分離も不可能。そこで、編み出されてきた方法は、適度なコンタクトを恒常的に持続するための装置である。
 混ざらない、離れない、外部との関わり合い、内部と外部の二重構造を保ち続けること。

 いわばスープの冷めない距離を維持するために、様々な次元で部分的に共同体と外部を隔離する方策をとる。

  1・場所の隔離 
  2・時間の隔離 
  3・造形による隔離 

 まずは、「コンタクト回路」を物理的な意味での「境界」エリアに設定すること。つまり生活圏の周辺および外側に、神社仏閣、墓などを配置し、そこで交流をおこなおうとするもの。普段の生活からはある程度の距離をたもつことができる。

 次に時間を区切ること。特別な聖なる時間を設定し、その時に交流を行なおうとする。多くが一年周期で繰り返される祭りや儀式となる。

そして特別な結界などで日常空間とは区切られたコンタクトエリアを設ける。鳥居や注連縄、特定の建造物などがそれだ。

この3つが全て重ねられている場合もあれば、そうじゃないこともある。例えば縄文集落のように、死者の遺骸が共同体の中心に埋められている事例など。とはいえ、共同体の中心、広場の中心はやはり特別な場所であり、普段の生活空間とは異なるという意味での「境界」エリアと見ることも可能だろう。また、普段の生活空間そのままに、正月などに、門や入口や柱、カマドなどに注連縄をして祈るという習俗等は2番と3番が合わさったものと考えられよう。

いずれにせよ「共同体」にかぎらずあらゆる生きられる組織体では、外部との一定の距離を保ちつつ、あるコントロールされた交流を持続する回路をかならず持っている。そこでは何度も繰り返すが、閉鎖し凝り固まることも、外部と混ざりすぎて自己を失うことも、あるいは後述するように外部を内部に編入支配しつくすことはない。つねに外部と内部がそれぞれ二重に並列しながら接しているのである。